十勝に新しい製粉工場「麦の風工房」が誕生しました!
私どもは、国が導入した水田・畑作経営安定対策の一環として今年3月末に製粉工場「麦の風工房」を完成させ、試験操業を終えた5月末から同工場を本格稼働させます。同工場の機械設備はハサップ(HACCP)(※2)に対応できるように設計されており、数年以内にハサップ取得を目指します。
製粉方法は石臼挽きの「石臼方式」と独自の「麦の風方式」があり、当面は石臼方式で年間1,200トン、麦の風方式で同2,000トンの計3,200トンの小麦粉を製粉し、近い将来には年産12,000トンの製粉工場を目指します。
いずれの製粉方式もマクロビオティック(※3)の考え方に基づいて粒度の荒いふすま(※4)だけを取り除き、できるだけ小麦まるごとに近い形で製粉します。小麦粉の白度は低いのですが、低温で製粉すると同時にふすまと胚芽が残るのでミネラル分が損なわれにくく、遊離アミノ酸(※5)を多く含むため、小麦粉の本来持っている豊かな風味が活かされます。また、ふすま臭が少ないのも特徴で、風味豊かなハード系のパンに向き、お菓子はサクサクとして口溶けのよい食感に仕上がります。
今年は小麦の品種交代の時期にあたり、「きたほなみ」(麺用)、「はるきらり」(パン用)、「ゆめちから」(パン用「超強力粉」)など、すぐれた新品種が北海道立農業試験場や独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構 北海道農業研究センターで開発されました。これらの新品種によって道産小麦が輸入小麦の付属品の立場から主役に転じる最大のビジネスチャンスが到来するものと考えており、新品種の普及には大きな期待が寄せられます。
しかしながら、地域経済の活性化が叫ばれる中にあって、北海道は新品種の普及に熱心であるとはいえず、スピード感に欠けるきらいがあります。実際に、農業協同組合(農協)や全国主食集荷協同組合連合会(全集連)系の集荷組合に出荷せずに「麦の風工房」に出荷する生産者には今年の秋に播種するための「きたほなみ」の種子が配分されておらず、「はるきらり」、「ゆめちから」についても種子の入手次期は不透明な状況のままです。北海道をはじめとした関係各機関にこうした事態の改善協力を強く求めていきたいと考えております。
一方、日本の小麦の自給率は15%程度と低く止まっています。輸入小麦には基準値内とはいえポストハーベスト(※6)による残留農薬が検出されることが多く、化学物質過敏症の人が食べると発症する場合があるともいわれています。「麦の風工房」で製粉される小麦粉の一袋一袋にはQRコードが印刷されており、消費者が携帯電話などの情報機器で小麦の生産者や栽培履歴を閲覧できるようになっております。私どもは安心・安全な北海道産小麦の消費拡大に寄与し、北海道が推進している「麦チェン」(※7)にも地場の製粉工場として貢献したいと考えています。
現在、十勝のお菓子屋さんと京都のお菓子屋さんが「麦の風工房」の小麦粉の特徴を活かしたお菓子の開発に取り組んでいます。国産小麦の生産量の約25%を占める最大産地である北海道・十勝地方に製粉工場ができることで、小麦の生産者にもさまざまな形で恩恵となればと考えています。
また、アグリシステムの関連会社である有限会社コスモス(北海道河西郡芽室町:代表取締役 伊藤恵子)では「麦の風工房」の小麦粉を使った焼き菓子などの地場産品の開発に取り組みます。この事業は経済産業省と農林水産省の地域資源活用新事業展開支援事業の補助金を受けて実施いたします。「麦の風工房」の小麦粉や関連商品は同社の関連会社であるナチュラル・ココ株式会社が運営する北海道・十勝地方から有機野菜とこだわり食品をお届けするショッピングサイト「ナチュラル・ココ」でも販売していく予定です。
日本人の主食である米を栽培していない北海道・十勝地方ですが、新しい製粉工場「麦の風工房」の誕生により。地産地消の考え方のもとで小麦(馬鈴薯を含めた)を主食とする新たな食文化を創造する一歩につながればと願っております。
(※1)2009年5月11日現在。
(※2)hazard analysis critical control point、危害分析重要管理点。NASA(アメリカ航空宇宙局)が宇宙食の衛生管理のために考案した手法で、食品工業やレストランの衛生管理に応用されている。ハセップ。
(※3)マクロビオティック(macrobiotique)とは「macro=大きい、長い」「bio=生命」「tique=方法」。直訳すると「長く生きるための方法」という意味。1930年代に桜沢如一氏が提唱した食事法で、玄米を主食とし豆類や海藻、住んでいる土地で取れた旬の野菜を食べるという日本の伝統的な食生活が基本となっている。
(※4)小麦粒の表皮部分。小麦のふすまには食物繊維、鉄分、カルシウム、マグネシウム、亜鉛、銅などの栄養成分が豊富に含まれている。
(※5)ヒトの細胞や血液中にアミノ酸分子のままで蓄えることのできるアミノ酸。
(※6)農産物の収穫後、輸送中のカビ等の繁殖を防ぐために農産物に使用される殺菌剤、防カビ剤や保存料などの化学薬品。
(※7)北海道米の道内消費の向上を図る「米チェン」に続く取り組みとして、輸入小麦から北海道産小麦への転換や市場ニーズの高いパン用の春まき小麦の作付け拡大などを戦略的に展開する北海道の新しい取り組み。
【お問い合わせ先】
アグリシステム株式会社
〒082-0005
北海道河西郡芽室町東芽室基線15番地8
TEL 0155-62-2887
FAX 0155-62-1599
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