4. 微生物の機能
土壌には様々な微生物が存在していますが、大きく分けると分解系と合成系に分けられます。さらに分解には有用発酵と有害発酵があり、一般的には発酵と腐敗として区別されています。
腐敗とは有機物の分解過程で、微生物活動によって多量のエネルギーをガスや熱として放出し、有害な中間物質の生成をともないながら、急速に無機化することで、さらに分解が進みすべての分解が終わった状態を腐熟と呼びます。これに対して発酵は、エネルギーの放出は少なく、短期間に有機物を吸収可能な状態に分解することです。これらの違いは、分解物を利用するものにとって有効かどうかが基準となり、腐敗は分解過程で有害物質を出し、さらに多くのエネルギーが失われるため有機物の利用効率が悪い、発酵は有機物をより効率よく利用できるということです。
また、合成系とは分解によってつくられた物質を利用して、窒素固定や光合成などで外部のエネルギーを取り込むことです。
5. 理想の土づくり
土壌中には発酵・腐敗・合成のそれぞれをおこなう微生物が同居しており、同時にすべての系が進行しています。どの系をおこなう微生物の割合が高いかによって、土壌のよしあしが決まっています。理想的な土壌では、発酵系と合成系をおこなう微生物の割合が高く、互いに連動している土壌です。
乳酸菌や酵母などを主体とした発酵微生物が多くいる土壌では、生の有機物を施用すると香ばしい発酵臭がして、こうじカビが多く繁殖します。有機物は分解され、その副産物としてアミノ酸、糖類、ビタミンや生理活性物質がつくられ土壌中に多くなります。それらを作物が利用して生育が非常によくなります。また、フザリウムなどの病原菌の繁殖も抑制するため病気も発生しにくくなります。
光合成細菌や藻菌類、窒素固定菌などの合成系微生物が多くいる土壌では、少量の有機物の施用でも土壌は肥沃化します。もっとも有名なものが、マメ科植物の根に共生する根粒菌です。根粒菌は空気中の窒素を固定し、マメ科植物に提供します。一方マメ科植物は光合成で作ったブドウ糖を根粒菌へ供給するという共生関係を持っています。合成系の微生物を利用できれば化学肥料を施用しなくても、現状以上の収量を上げることも可能です。
理想の土づくりとは、発酵系と合成系の微生物を土壌中で優先的に定着させることです。そのためには、各種の微生物の特性を十分理解する必要があります。どんなに強力な微生物も土壌中に単一で定着させることはできませんし、微生物は互いに強く影響しあっています。自然界には数多くの有用な微生物が存在していますが、土壌微生物の世界は極めて複雑であり、自然発生的に発酵合成系の微生物が定着するのを待つよりも、必要な微生物を土に入れてやることのほうが効果的です。
また、前提として微生物が繁殖しやすい環境を整えてやることが、土づくり成功の鍵になります。そのためには、微生物の餌となる有機物をなるべく多くの種類施用することと、微生物の棲みかとなる多孔質の構造をした貝化石や炭を併用することが効果的です。
このようにして土づくりをした畑では、無農薬・無化学肥料で高品質・多収という従来の栽培技術では考えられない成果を得ることができます。
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